「ライバル」
すぐ近くに住んでいる娘一家は、5人家族だが子供は男子が3人なので、男4人を1人の女が面倒を見るという典型的な男系家族。二人目か三人目は女の子が欲しかったというが、これも思うに任せない天からの授かりもの。現状を維持するしかない。
但し、孫が男の子3人というのは、ジジにとっては何とも有難いプレゼントである。
子どものころから母親一辺倒で、父親に対しては何かと反抗的な娘であるが、男三人の孫の面倒を見させてくれたのは、大きな親孝行ではある。それも、定年退職を挟むように元気な男の子を、ジジのペット代わりに預けてくれた。特に次男出産の折は、長男をジジが預かって、市内にある公園と言う公園をハシゴして冒険させてきたものだ。
三人それぞれタイプが異なっていて、ジジの孫に寄せる夢は膨らむばかり。
特に三番目の、目下高校球児として活躍する三男君は、小学校低学年から児童保育のお迎えはジジの役目であった。中学校から越境進学、そして高校生となった今も、「ばあちゃんの夕ご飯や弁当の美味さは格別だ」と言いながら、ジジババのスネをかじってくれる。二人の兄は小学校卒業と同時に我が家も卒業してあまり来なくなった。
その分今もって朝な夕なに「ばあちゃん、何かある?」と冷蔵庫を開ける三男君は、一緒に生活しているかのような近さと可愛さを感じるのである。
そんな高1野球部員が、何を思ったのかこのところ将棋にハマっている。ジジとしては大歓迎で、野球と言う勝負の世界に身を置く者が、室内で、しかも一対一で対局する盤上の勝負を勉強するのは、こちらから推奨したいくらい必要なことと思っている。
もちろん、スマホやパソコンを相手に、自分なりの差し方を覚えたばかり。ジジの足元にも及ばないが、足もと近くに来ているような相手をしてやっている。
将棋を始めてかれこれ4カ月になろうとしている。駒の役割、駒の持つ意味などが少し分かり始めたところだが、彼の気持ちの中では目下のライバルはジジである。ジジに勝つことが当面の目標となっている。「かたはら痛い」と思いつつも、乗り越えようとする彼のカベになってやるのもジジの役目。上手にあしらいながら、ときには「この手は素晴らしかったじゃないか」と褒めたり、「これは無駄な一手」と厳しさを見せたり。
この年になって忘れかけていた将棋を思い出させてもらったジジを、ライバルと思って胸を借りにくる彼。それなりの進歩を見せている。「まだまだじゃね~」と口では言わない。態度で示す。そしてたま~に彼が勝つと、満面の笑顔で帰っていく。有難い遊び相手、有難いライバルの出現である。